日経コラム 第7回 2005年8月14日
私たちの家庭には、実に多くの家電機器が存在します。とりわけ、携帯電話、デジカメ、パソコン、プリンター、PDAと呼ばれる情報端末は、この10年間で普及してきたものです。
便利なものが登場する反面、気がつけば、あなたのお家のコンセントは家電の電気コードでいっぱいになっていませんか。電気コードがタコ足状態でゴチャゴチャになっていませんか。
家電機器が機能するためには電気が不可欠です。乾電池で駆動する小型機器もありますが、一般的には電気を供給するコードが家電にはなくてはなりません。
「作業中にコードが邪魔になる!」という生活者の声から生まれたコードレスアイロン(1988年)は、アイロンの中に蓄電池を備え、アイロンの置き台を充電器にすることで、「コードレス家電革命」を起こしました。今では、コードレス掃除機なども登場しています。
しかし、コードのわずらわしさから解放されても、結局は蓄電を伴うので充電器が必要となり、このままではコンセントにつながった充電器が家中に溢れてしまうかもしれません。
そこで、大阪らしい『楽しさと実利』の視点で、家電の電気コードとコンセントを半チャンネルひねってみましょう。
“情報”が無線で送信できるなら、“電気”も無線で送ることはできないかしら・・・。そんな発想でこれからの家電を考えてみたいと思います。
まず、電動歯ブラシをよく観察してみてください。電動歯ブラシとその充電器が合わさる面は、電気を通す金属接点がなくツルンとしています。これは電磁誘導方式と言って、電気コードのように直接的な接点がなくても電気を送れるしくみです。無接点なので水にぬれても安心です。
電力の強さや伝送効率など現時点では制約のある技術ですが、これらが解決すると個別の機器毎の充電器は要らなくなるかもしれません。携帯電話や音楽プレーヤーは、ツルンとしたお皿のような充電器の上にのせるだけで充電できるようになるし、このような充電器が浴室にあれば、漏電を気にせずに、テレビやオーディオなどの機器をそこにのせるだけで利用できるようになるでしょう。
そう、これは充電器というよりも、「口のないコンセント」と言った方がふさわしいかもしれませんね。
部屋の幅木(はばき)がこのような「口のないコンセント」になったら、家電コンセントのゴチャゴチャ状態は解消され、家電の自由度はもっと拡がると思いませんか。
デジタル化・ネットワーク化の技術に目を奪われがちですが、家電の動力の基本である電気供給の革新そのものが、未来の暮らしの革新を支えるのかもしれません。
みなさんも「口のないコンセント」のユニークな活用方法を考えてみてはいかがでしょうか。