03. エアコンが送るナチュラルな風

日経コラム 第3回 2005年7月17日

 環境省などが主導する温暖化対策運動「チーム・マイナス6%」がスタートし、「クールビズ」もすっかり定着してきたようです。

 暑さはますます厳しくなりますが、国民全員の運動として、日々の小さな積み重ねはとても素晴らしいことだと思います。汗タラタラでも、みんなと一緒ならつらくない!です。だけど、「建物の中にいるより、外の方が涼しい…」と感じたことはありませんか?

 近代化に伴い、オフィスビルなどの建物や住宅は気密性・断熱性を高めてきました。外気との遮断を強化し、屋内の温度・湿度を快適にコントロールしようとしてきたのです。空気を入れ替える換気機能はあっても、外の風を積極的に取り入れるようにはなっていません。だから、部屋の中が蒸し風呂のようになってしまいます。「冷房設定28℃」のオフィスや住宅には、いつの間にかたくさんの扇風機が回っている・・・なんてことになっているのではないでしょうか。

 ここで、大阪らしい『楽しさと実利』の視点で、これからの空調を半チャンネルひねって考えてみましょう。

 暑いのも自然、でも、涼やかな風を生むのも自然です。温度は28℃でも、少しの風があれば涼しさを感じるということにもっと着目してはいかがでしょう。

 風を感じるためには、風の自然力を活かすための工夫が必要です。風の通り道をつくってあげると、少しの風でも屋内に入り込んできます。

 また、風の流れがもたらす浄化作用も見逃してはいけません。昨年の夏、大型の台風が過ぎ去った後に、私は自宅のベランダに出てびっくりしました。ベランダのすべてのチリが雨風で流され、ピカピカになっていたのです。風がよく通る場所では、自然にチリやホコリなどの余分なものがかき出されるようで、自然の力がベランダをきれいにしてくれたと言えます。同様に、風が部屋の中を上手に抜けていけば、床下隅のホコリだって掃除しやすいように出てきてくれるかもしれません。

 基本的に、風の通り道は部屋の間取りで決まりますが、間取りが適切でない場合、エアコンと扇風機を活用して、部屋の中に28℃のさわやかな風を起こすというのはどうでしょう。

 特に、高層のビルやマンションでは自然の風をそのまま導入することは困難ですから、自然力の代替をエアコンなどの家電が担っていくイメージです。ある時は自然の風を部屋に取り入れ、ある時は自然に近い風を部屋の中に生み出す。「冷やすエアコン」から、「涼をもたらすエアコン」へ。外の風を活かす“自然協調型エアコン”とでも言うのでしょうか。

 求めているのは、さわやかな風の質なのかもしれません。部屋の真ん中で、ゆるやかな風に揺れる風鈴の音を聞いてみたいと思いませんか?